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羽モノ嫌い

執筆者の写真: LatoLato

金曜日は歌ってきた。土曜は雨でお休み。雨嫌だなあ。

夏になると虫が増える。可愛い子ぶってるわけでは決してなく、羽がある昆虫が大の苦手だ。セミ、蝶々、蛾。とても怖い。恐怖でしかない。本当に、混じりっけなく、純粋に、「恐怖」100%なのだ。どうしてこんなにも私はそれらが怖いのだろうか。わからない。以前、干してあった洗濯物を家に取り込んで、そのときに洗濯物にセミがくっついていたのか家にセミが入ってしまったことがある。洗濯物をたたもうとしたらジッジジジッと言いやがて存在に気付いて絶叫し猛烈ダッシュで部屋を出た。扉をバタンッと締めて、もう部屋には戻れない。自分の楽園である部屋は、恐怖のそれとなったのだ。セミ。カラッとしている質感。しかも、そう、羽がある。それが恐怖なのだ。どこに飛んでくるか予測がつかない。小さい蛾ですら怖いというのに、あのサイズ感。モンスターや幽霊の類よりも一番ちゃんと怖い。結局、自分の部屋に入れなくなった私は、自宅の廊下から友達に電話し、頼み込んで来てもらいその羽モノを外に出してもらった。セミの恐怖体験で言うと、いつも歌っている現場でも思い出がある。夜、どこからともなく飛んできたセミにより、私は、私の定位置にいられなくなり、またしてもギターを持ったままダッシュし持ち場を離れざるを得なくなった。その時は通りがかりのお兄さんがセミを捕まえてくれ、セミを所持したまま遠くに行ってくれ、九死に一生を得た。本当に心の底から感謝し、彼は私のヒーローだった。

あと、蝶々も蛾も怖い。羽モノ枠なので、羽を閉じて止まろうと広げて止まろうと私にとっては変わらない。ので、あとはもうサイズとともに恐怖度数は上昇する。アゲハ蝶とか、黒アゲハ、とか、デカイものはもう小さい蛾よりも恐怖だ。学生の頃、夏の帰り道、角を曲がると先方にアゲハ蝶が飛んでいた。どうすると思う?もう、その道は通れないのである。不本意ながら遠回りをし、アゲハ蝶を避けるのだ。1センチくらいの蛾ですらとてつもない恐怖を感じてしまう。

自分のこの特性について、本当にコンプレックスに思っている。

「怖いものなし」とか、「度胸がエグい」とか、そういう女に憧れ、目指して生きている私は、この羽モノが苦手である自分がとても嫌いだ。虫くらいでキャーキャー言う女、とか本当に本当に思われたくないのである。でも、昔からこれだけは克服できない。

青葉でどんだけ怖そう奴に絡まれようとも、ヤバそうな兄ちゃんたちに囲まれギャーギャー言われようとも、歌っているところに密着され肩を抱かれようとも、私はまるでへっちゃらで歌うのを止めてしまうことはない。決してない。決して、だ。私は長年あの現場でいろんな修羅場を潜り抜け、慣れ、歌うメンタルの置き所をちゃんとわかっているので強いのだ。惑わされないし、混乱して歌えなくなってしまうとか、そんな「かわいい女」みたいなことはない。

だけど、きっと、セミや蛾が近くに来たら一瞬で歌うことを放棄し、神聖なる持ち場を一目散で離れてしまう。どうしたら治るだろう。催眠術でもかけてもらうしかないのか。

夏は、そんな恐怖の季節だ。

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