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  • 執筆者の写真Lato

赤と白(壮絶記)

今週月曜、私は運命の日を迎えていた。

個室で待つ私は緊張に包まれて彼が来るのを待った。

カチャッとドアが開く音。振り返った私は

「二週間ずっと憂鬱だった。。。」

そういうと彼は

「ハハハ。えらいww来たじゃんww」

いつものごとくヘラヘラしながら彼は私にそう言った。

私は、このヘラヘラした男を信頼している。腕は確かなのだ。すごく繊細で優しく、とてもいい仕事をする腕を持っている。いつだって彼を指名して彼に託してきた。

いつか、私の親知らずを抜く日が来たら。任せられるのはこの男以外にはいなかった。

その運命の日がついに来たのだ。

今回の彼の任務は、私の右下のほぼ埋まっている親知らずを除去することだ。

計画はこうだ。歯茎を切開して三分割して取り出す。うむ。言葉にしたら簡単だ。

だが私は生まれてから一度も歯医者で抜歯をしたことがない。初体験だ。

お店ライブの予定がない9月を選び、週末のストリートライブに間に合うよう月曜に設定した。賢い。ちゃんと考えている。

かくして、私の親知らず除去手術は始まった。

まずは麻酔をして、そのあとはもうまな板の上の鯉だ。恐怖と戦う。時折痛くて「んあっ!」というと、「麻酔たすね」それを数回。歯医者さんは「麻酔の量結構多く使ってるから気持ち悪くなるかも。吐きそうだったら言って」

ああ言うさ。言うでしょうね!!この男は私が吐くことすら想定内なのか。。

時折先生は「がんばれー」とか声をかけてくれた。顔面が崩壊するかと思った。怖かった。私の顔は原型をとどめてる?大丈夫?ボーカルできる?もう泣きそうだった。

30分ほどもたっただろうか、地獄の拷問の中、「・・・だめだ取れない、全部粉砕して取り出そう」

なんですって!!!ドリルの振動、いや、位置よ!ドリルもう喉らへんじゃない?苦しい!こわい!その吸引機喉に刺さってない??死んじゃうよ!!

・・・と。どうやら全部取り出せたらしく、ちくちく何針も縫い合わせて終了。


生きてる。


「おわったよ」「とれた?」「うん、取れた」

見せてもらうと赤い血にまみれた白い砕かれた破片たち。嗚呼、赤と白ぉ。。

「ありがと」「うん。がんばったね」


ガーゼをかみしめて帰宅。地獄はまだ終わっていない。

麻酔が切れる前から痛くて、でも大量の麻酔と手術で疲労していた私はソファーに座って10分ほどうとうとしてしまう。すると、何かがしたたり落ちる感覚で目を覚ます。口から生ぬるい何かが流れ続けていた。腕で拭うと。赤。「うわ!」と口を開けた刹那。口いっぱいにたまっていた血を吐き出してしまった。首から下は血みどろ。洋服の上下も、下着まで血みどろで。焦りまくった。一目散でキッチンのシンクに行き口内に残った血液を吐き出す。

あちこちに血痕。自分は血まみれ。殺人現場みたいだった。ハロウィンだって、ここまで血のりは使わない。ふらふらしながら服を着替えるとのたうち回るほどの痛みが襲った。歯医者でもらった強力な痛み止めを立て続けに二錠のみこんだ。

すると痛みは薄らいだけど、血はまだまだ止まらない。貧血で死ぬんじゃないかと思った。

真夜中になり出血量が減ったためベッドで就寝。ご想像の通り、朝、枕は血だらけだった。

でも、どうやら血は止まったらしい。

親知らず抜歯、の中でも、どうやら私の親知らずは厄介で、ちょっと難手術の部類だったようだ。


翌日ふらふらしていたし痛みもまだひどく、会社を休んだ。顔も腫れていて最悪だ。そして口を1.5センチほどしか開けられない。

現在木曜。明日青葉に出られるかな。自分の回復力を信じたい。でも、もしかしたら行けないかもしれない。顔の輪郭がへんだもん。

四日も歌を歌えてなくて、ストレスだ。早く日常に戻りたい。


※月光冥利の「赤と白」は親知らず抜歯の歌ではない



閲覧数:49回1件のコメント

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1 Comment


12pul12
Sep 07, 2023

台風来てるし無理せずに

腫れや痛み引いて早く回復しますように❤️‍🩹

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